ども!タビビシスター(@tabibisister)です。
シリア内戦から早10年が経過しました。
HDDを整理していたらシリア旅行の写真がちらほら出てきたので、今更ですが振り返りがてら旅行レポを記事に残しておこうと思います。
2011年2月半ばから3月後半にかけて、私はイラン・シリア・レバノンを旅していました。
帰国したのが確か3月20日で、丁度内戦が本格化する直前くらいの時期です。
東京に戻った翌日に新聞で数百名規模の抗議運動が起こったことを知り、それからあれよあれよという間に事態は悪化。
そして、現在も続く激しい内戦へと突入してしまったのです。
また、それと同時期に日本では東日本大震災という1000年に一度の大地震も発生していて、色々な意味でシリア旅行は私にとって忘れられない旅になりました。
この記事では、自分の備忘録がてら当時の写真(古くて解像度悪いです)も交えつつ、自分の旅の思い出や現在のシリアに対する想いなどをつらつらと語っていきたいと思います。
目次
内戦前のシリアはいたって平和な国だった
シリアと聞けば今は『内戦、危ない、イスラム国』といったきな臭い単語が浮かび、残念ながらネガティブなイメージで語られてしまいがちです。
しかし、内戦が起こる前までのシリアはとても平和で、ムスリム諸国の中でも非常に旅行しやすい国だったんですよ。
当時、私はテヘランから飛行機でダマスカス入りして、そのまますぐにアレッポに北上。
・ダマスカスin
・アレッポ
・ハマ
・クラックディシュバリエ
・パルミラ
・ダマスカスout
というアレッポからダマスカスへ南下するルートで、2週間程ののんびり旅行を楽しみました。
オリーブ石鹸が名産品!古都アレッポでのんびり市内見学
シリア最初の観光は、オリーブ石鹸で有名なアレッポという町から始まりました。
ここは内戦では激戦地となり、私が行った時は非常に落ち着いた雰囲気で風情のある古都という感じの印象でしたが、当時と今とでは景色も何もかも様変わりしているかと思います。
町の名物アレッポ城からはアレッポの街並みが一望できて、風情ある美しい景観を堪能できたのも今となってはいい思い出です。
この街並みがすっかり廃墟と化していると思うと、何とも言えない物悲しさを感じてしまいますね・・・。
アレッポ城近くにあるスークは活気で溢れていて、トマトやきゅうりといった野菜市場やサンドイッチ屋台のようなお店が沢山立ち並んでいて、お腹が減る度に1日何往復もしていました。
オリーブ石鹸が特産品と聞き、重いのを覚悟でお土産用に4つくらい購入。
実際に帰国してから使ってみたけれど、保湿効果もそこそこあるのにさっぱりした使い心地で一時期は結構ハマっていましたね。
アレッポではスプリングフラワーホステルという安宿に宿泊。
チェックインする際にパスポートを見せたら、フロントのお兄さんが
「もう数か月で誕生日じゃないか!おめでとう!」
と言ってくれて、妙に嬉しく思ったのを覚えています。
彼は内戦が始まった後、無事に逃げられたのでしょうか。
水車の町ハマで街歩きと天空の城ラピュタのモデルになった城を見学
アレッポの後は、ハマという町を訪れました。
ここも内戦ではかなり激しい戦闘が繰り返された地域です。
街中には一際目立つ大きな水車が設置され、その近くには水の流れる庭園もあったりと、景観的にも非常に美しい街でした。
住人も穏やかで陽気で人懐っこい人が多かった印象です。
全体的にすごくのんびり穏やかな空気が漂っていて、私がシリア観光した中でも一番気に入った町がハマでした。
ここでは特に何もすることがなかったので、ひたすら町をブラブラ。
旧市街にあるお菓子屋さんで弾力のあるモチモチしたミルクプリンのようなものを発見し、これがまた美味しいのなんの。
プリンを食べるために毎日2回ほど通い詰めた結果、店の前を通る度に住人から声をかけられ、すっかりミルクプリンの女として認識される羽目に(笑)
ここでの宿泊はカイロホテルという安宿だったのですが、ベッドにはやたら強烈なダニが潜んでいて、寝ている間に刺されまくってえらくしんどい思いをしました。
ハマではホテル主催のツアーに参加して、クラック・デ・シュバリエという天空の城ラピュタのモデルになった城を見学。
要塞というだけあって内部構造がかなり複雑で、ドラクエのダンジョン感があってとても楽しかったですね。
お城のてっぺん付近から見下ろすゆるやかな丘陵地帯や白い街並み。
ボーっと眺めながら旅情に浸ったのも個人的には思い出深いです。
シリアの宝!世界遺産パルミラ遺跡の迫力に圧倒される
ハマの後は世界遺産としても有名なパルミラ遺跡のあるパルミラという町へ。
ここは本当に遺跡しかない町なのですが、やはり世界遺産なだけあって建造物自体は非常に見応えがありました。
中近東エリアは遺跡が腐るほどあるので、見ているうちに段々遺跡不感症になってくるのですが、パルミラは見て損はなかったです。
ズラーっと等間隔に立ち並ぶ巨大な円柱の迫力たるや、エジプトのルクソール神殿に勝るとも劣りません。
黄色がかった乾いた土色の柱と真っ青な空のコントラストが目にも鮮やかで映える映える。
夕日に照らされてオレンジ色がかったパルミラ遺跡。
群青色の夕焼け空の下、阪急ツアーで来たという日本人のマダム達が夕焼け小焼けを大合唱していました。
ちなみに、私は遺跡観光中にたまたま近くにいたシリア人から日本で震災が起こったことを知らされ、突然のビッグニュースに大いに慌てふためいた記憶が・・・。
当時は旅中にガラケーは持参していたものの、ほとんど使用せず放置。
そのため、日本のニュース等も見ておらず、震災発生してから3日後くらいにその事実を知るという体たらくっぷりでした(汗)
日本人には有名だったシリア人のツアーガイドスズキさん。
ユーモラスで気さくなナイスガイで「地球の歩き方に口コミを書いてね!」が口癖だった彼。
観光の後で自宅に連れて行ってもらい、そこで夕飯をご馳走になりながら彼の奥さんや子供達と一緒にテレビで津波の映像を見た時の衝撃は未だに忘れられません。
真っ黒い津波によって電柱や人や車があっという間に押し流され、そこにある全てのものが濁流の中へと飲み込まれていく・・・。
あまりにも恐ろしい光景に呆然自失となって、何も言葉が出てきませんでした。
「あなたのご両親は無事なの?」
「こんなところにいていいの?君は日本に帰らなくていいの?」
「本当に信じられない。なんてことだ。私達は祈ることしかできない。」
そんな私を心配そうな表情で見つめながら、まるで自分のことのように悲しんでくれた彼らの優しさに思わず涙が・・・。
宿泊したホテルのオーナー・ハッサン。
当時まだ22歳。
ノリがよくて、お茶目かつ陽気な若者で宿泊中は何かとお世話になりました。
彼らも今はどうしているのだろう・・・無事にどこかで生きているといいけれど。
ダマスカス旧市街を練り歩いてアラブの雰囲気を満喫
パルミラ観光の後はダマスカスでゆっくりと過ごしました。
ダマスカスでは旧市街をひたすら練り歩いたんですが、ここがすごく趣があって個人的にとても好きな場所だったんですよね。
何故か写真が一枚も残ってないのが悲しいです。
有名なアイス屋さんでピスタチオアイスを食べたり、荘厳なモスクを見学したり、商店でアラブ風の雑貨を見て周ったり。
レストランでバックを忘れて閉店間際に大急ぎで取りに行ったり、JAICAの人に話しかけられたり、新市街で道に迷ったところをタクシーの運ちゃんに拾われたり・・・
と、トラブルも出会いもそれなりにありました。
オスマリーエという鳥の巣のような素麺の中にナッツが入った焼菓子を見つけて、これがまたとんでもなく美味しいので大ハマり!
サクサクで甘くて、紅茶のお供にぴったりなんですよ。
もう一度食べたいです、切実に。
シリア人の優しさに大いに心を動かされる
ダマスカスで一番印象に残っているのが帰国する直前、空港に向かうバスに乗る時の出来事です。
バス停を探していたら20歳そこそこの兄ちゃんが声を掛けてきて、約2キロほど離れたバス停までわざわざつきっきりで案内してくれました。
しかも、バス停に着いたからそこでバイバイというわけではなく、私が貧乏臭い恰好をしていたせいなのかどうかは謎ですが、バスに乗るためのお金までをも手渡そうとしてくるから驚いたのなんの。
そのうえ、私がバスにちゃんと乗れるかどうかを見届ける為にずっとバスが来るまで一緒に待っててくれ、確実に目的地で降りられるようにとわざわざ運転手に私が降りる駅名まで伝えておくという心配りまで見せてくれる始末。
極めつけは道中長いからと、頼んでもいないのに近くのお店で飲み物とお菓子まで買ってきて持たせてくれるという、あまりにも神がかった親切っぷりを発揮されてしまい、もう感謝を通り越して唖然。
バスが出発する時刻になると
「これでもう大丈夫。じゃあ僕はこれで失礼するよ。楽しい旅を!」
と満面の笑顔で何事もなかったかのようにあっさりと去っていきました。
シリアの人々のホスピタリティはアラブ諸国の中でも随一
こんなシーン、今どき日本でもなかなかお目にかかれないですよね。
自分にも用事があったはずなのに、それも厭わずに全く関係ないはずの見知らぬ旅行者にこれだけ手間と暇と時間を割いてくれるなんて。
何の見返りもなく、恩着せがましいことも一切言わず、無償で、こんなに親切にしてくれるなんて・・・。
そんなことがシリアでは沢山ありました。
道を聞いただけなのに目的地まで車で連れて行ってくれたり、同じく道を聞いただけなのに食堂で夕飯をおごってくれたり。
普通はここまでされると何かあるんじゃないかと疑いたくなりますが、みんな下心もなく
純粋に困っている旅人に何かしてあげたい
自分ができることがあれば手助けしてあげたい
という親切心から私に対してあれこれ世話を焼いてくれたのです。
当然、中にはいい人だけではなく悪い人もいます。
けれど基本的にイスラム圏の人々は旅行者に対して親切で、困っている人がいれば無償で何か与えてあげたいと考える誇り高い精神を持った人々でした。
特にシリアはイランと並ぶくらい親切な人が多かったイメージです。
シリアというとどうしても危険というイメージを持ってしまいますが、実際そこに住んでいる人々はとても親切で優しくて非常にフレンドリーかつホスピタリティに溢れた国民性を持っています。
今まで行った国の中でもかなりのグッドピープルぶりでした。
そんな人々の優しさに触れる度に、日本にいる時の自分の振舞いを思い出して恥ずかしくなってしまい、彼らを少しでも見習おうと思ったりもしました。
いつかシリアに平和が訪れることを信じて希望を持ち続けたい
私が日本へ帰国してからすぐ、一気に内戦状態に突入してしまったシリア。
アレッポ、ハマ、ホムス、そしてダマスカス・・・
今現在も紛争状態が続き、激しい戦闘が繰り返されている地域として新聞やニュースでその惨状を目にする度に、なんとも言えない気持ちになります。
楽しく散歩していたあの通りも、人類の英知の結晶のような素晴らしい遺跡群も、今やすっかり見る影もなく破壊され尽くし、廃墟になっているというのが未だに信じられないし実感が湧きません。
まさか自分が訪れた国で内戦が起こってしまうなんて・・・。
旅行中お世話になった見知らぬ青年やおせっかいな家族、商店のおじさん、気のいいタクシーの運ちゃん、ベドウィンの老夫婦、宿のスケベ青年・・・みんな無事でいるだろうか。
シリアの住民の多くが難民になって国外に流出したと聞きますが、私が出会った人達の中にももしかしたら難民になった人がいるのかも知れないと思うと心が痛いです。
中には、戦闘で亡くなってしまった人もいるかも知れません。
優しかった人々、素晴らしい文化財、美味しい食事、趣のある街並み・・・
私が行った時のシリアはもう戻らないけれど、それでも記憶の中には存在し続けます。
些細なことでも目に焼き付いています。
シリアが内戦状態になってしまったことで、旅を記録するって改めて大事なことなんだなと実感しました。
当時は旅行に集中したいという理由で、ほとんど写真を撮らなかったんですよね。
いちいちカメラを取り出すのも面倒臭くて、でも、もっと撮っておけばよかったと今更ながら後悔しています。
当時の美しいシリアという国を、もっと記録として写真に残しておけばよかった。
自分が行った場所のうち、ほんの少ししかデータとして残っていないのがすごく悔しいです。
まさか、こんなことになるなんて思っていなかったから。
いつかまた、シリアの内戦が完全に終わって、町も復興して、人々が安全に暮らせるような時が来たら、もう一度シリアを訪れたい。
私達は日本という国に生まれて、ある程度は自分の好きな生き方を選択できます。
けれど、現在のシリアの人々は自分達の国で安全に生活することもままなりません。
内戦状態の中で、全てを捨てて他国へ逃れ、ゼロから生活をしなければならず、その過程で命を落とした人も沢山います。
自分が日本という安全な国に生まれたこと自体が既にとんでもないラッキーなのだと、シリアの内戦を通して改めて痛感しました。
海外旅行なんて、ある程度自国が平和で豊かでないと出来ませんから。
実は日本のパスポートを持てた時点でものすごい幸運なんです。
そのありがたみ、重さを噛み締めて、これからも私は海外旅行に行き続けたいと思います。
最後に。
シリア旅行中、日本への留学経験があるというダマスカス大学の学生とたまたま出会った時に、そこでやりとりした会話を記しておきます。
「日本人の嫌いなところは?」
私が質問すると、彼はこう答えました。
「何でも無理、できないってすぐに決めつけるところだね。日本人は誰かのやりたいことや夢に対してすぐに無理だと言う。すぐに諦める。僕たちは同じ人間なのに。能力は変わらないのに。
無理だなんてやってみなければ分からないよ。僕は将来考古学者になりたい。だから今、勉強を頑張って夢に向かって努力している。日本人だったらそれをきっと無理だと言うだろうね。
でも、僕はそうは思わない。夢を持って自分が出来るって信じていればいつか叶うと思ってるよ。時間はかかるかも知れないけど。
だから君もやりたいことがあったらまずはチャレンジしてみるべきだ。最初から無理だなんて思わないでさ。」
無理だなんて思わない。
夢を持って努力していれば、信じていれば、いつかは叶う。
・・・私も、そう思っています。
だからきっと、いつかシリアにも平和が訪れると信じたい。
どんなに時間がかかっても、いつか、きっと。
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